今回は黒沢清監督の『chime』
冒頭に白状いたしますと、自分は黒沢清監督は存じ上げておりましたが作品を鑑賞したことがなく、、
本作品も界隈では「黒沢節炸裂!」なんて謳われていますが、その真骨頂を知らないままに鑑賞をした為、今回は忖度なくすっきりとした気持ちでレビューができそうです 笑
『え、おい。絶対に終わるなよ?』
そんな僕の気持ちを裏切るようにエンドロールが流れて終わりを迎える45分。
ストーリーはまるでないように感じるんですが、思い返すと良いシーンが目白押し。
そんな不思議で不気味で心にジメジメと残る最高の作品について、感想をつらつらと。
あらすじ
料理教室で講師として働いている松岡卓司。ある日のレッスン中に、生徒のひとりである田代一郎が「チャイムのような音で、誰かがメッセージを送ってきている」と不思議なことを言い出す。事務員のあいだでも田代は少し変わっていると言われているが、松岡は気にせず接していた。しかし別の日の教室で、田代は「自分の脳の半分は機械に入れ替えられていてる」と言い出し、それを証明するために驚きの行動に出る。これをきっかけに松岡の周囲で次々と異変が起こり始め……。
引用元:映画.com
作品紹介
引用元:映画.com
・監督:黒沢清
・公開日:2024年8月2日
・上映時間:45分(短い!観やすい!)
・キャスト:吉岡睦雄・小日向星一・天野はな
じわじわっと浸食してくる恐怖
早速余談になってしまうのですが、、
本作、とにかく前情報が掴みにくい!笑
色々なプラットフォームで広告・宣伝を見ても、全く内容が分からない広告だらけで内容掴めず。。
でも、だからこそ、本作を楽しめました。というより、これを広告として打ち出すにはあまりにも難しいです。。笑
主人公は料理教室の先生の松岡さん
そんな松岡さんは一人息子と奥さんとの3人暮らしで、立派な一軒家で平和に暮らしている
前情報はもう本当この位でオッケーです。あとは感じろと。そんな映画でした。
冒頭料理教室でのシーン
不可解で不気味な田代くん(周りからも不思議な目で見られている)が、「僕の脳は半分ロボットなんです」ととんでも発言をしたり、松岡先生の調理法を無視して料理をし続けるシーンなど、彼自身の奇行にフォーカスが当たっているシーンがあるのですが、
そんなことよりも、一番大事なのは、それに対する松岡先生のリアクション
「あ、そうですか。うん、じゃあ続けててください」
いや、そんな簡単にあしらえる状況じゃない 笑 でもそんなことすらスルーできる変人。
「え?お前もやばい奴なんか?」
そう思うと止まらない。え?君も?あなたも?みんな不気味。
アウトレイジよろしく「全員、変人」
登場人物が総動員で不気味を提供してくれるので、じわじわとその恐怖が浸食してくる、そんな映画でした。
引用元:映画.com
その恐怖は日常へ、、
私自身、この映画の一番の恐怖はまさに
「あれ?もしかしたら、自分の近くの○○さん。あの人も実は、、」
こんな感情をひっそりと帰宅時に持ち帰らせる部分にあると感じました。現に今この記事を書きながら、何度も鳥肌が立っています。。笑
~以降相当なネタバレあり~
料理教室にて1on1で丸鶏の調理の指導をしているシーン
「なんか気持ち悪いんですよね、中途半端に調理されてて、ブヨブヨしてるし。
この手みたいな部分が羽ですか?あれ、よく見たら頭がないんですね~。」
若い女性の菱田さんは、料理教室にきているにも関わらず調理をすることに嫌悪感。
そして、そんな言うとおりにならない菱田さんに嫌悪感の松岡先生。淡々と刺し○します。
その後、○体を袋に詰めていくシーンがあるのですが、その袋に机?のようなものを一瞬立てかけるシーンがあるのですが、そこが妙にリアルで物凄く気持ち悪く、ゾッとしました。(シーンとしては本当に数秒です)
その後○体を担ぎ上げて車のトランクに押し込むシーンが遠目のカットで移っているのですが、ロングカットで風景も妙にリアル。そんな時に「あれ?これ俺の家の近くにもこんな場所あるな」なんてふと考えてしまい、そこからは映画と日常が交錯する感覚に陥り、脳裏に焼き付く。ここが恐い。
不気味が炸裂しすぎたので割愛いたしますが、、
「うおぉお、、! え?なんで?」
常人では理解できない気持ちの悪い緩急で人間が行動するシーンが多々あるのですが、それがまた変にリアルで、あり得ないかというと、そうでもない。
この微妙な狭間に、自ら現実味を足してしまい、離れなくなってしまうという点で、この映画が45分である理由もなんとなく分かりました。
もうこの雰囲気は、鑑賞した側の日常を蝕むには45分はあまりにも十分すぎるんです。
ラストに明確なオチもなく「え、、?」と終わらされるからこそ、深く深く考えこんでしまい、気付いたら術中にはまっている。凄い。
是非、変な考察意欲を持たずに、まっさらな気持ちで鑑賞していただきたいです。
あなたもじわじわと、飲み込まれるかもしれないですね。。ということで今回は以上です。
最後までご愛読ありがとうございました!
引用元:映画.com
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